Vol.4 内田 勝規 氏|SPECIAL TALK|バイヤーズ・ガイド

連載記事

SPECIAL TALK

株式会社オフィス内田 代表取締役会長

内田 勝規

カリスマバイヤーが教える「売れる仕掛け」

「生キャラメル」「牛乳プリン」の仕掛け人であり、「北海道物産展といえば東武百貨店」といわれるまでに育て上げ、“カリスマバイヤー”とも呼ばれる内田勝規氏。
現在、日本全国・海外での物産展、企画プロデュースを手がける内田氏に、物が売れない今日、食品小売業の課題、売場のつくり方、これからのバイヤー像、そして生産者・食品メーカーがとるべき行動等について聞いてみた。

【食品小売を取り巻く環境】
商品の二極化、価格競争の中で生き抜いていくために

 食品の販路には様々なジャンルがあり、拡がりを見せてきています。例えば地域の逸品であれば、昔は百貨店の物産展や量販店の催事など販売場所は限られていましたが、今では様々な業態が販売を行っています。通信販売であれば、ロジスティックの会社が通販をしたり、吉本興業が地域物産の販売を行ったり、あらゆるジャンルで販路が拡がってきています。しかし、このスピード感が生産者や食品メーカー側に届いていない。もう少し相互の情報交流が活発になったほうがいいでしょう。
 例えば日本中で行われている商談会は、出展者が変わらないから、どの商談会も似ていますよね。本来、販売する側の特徴を活かした商談会があるべきなのに、非常に画一的になってきている。また、百貨店の北海道物産展は、どの百貨店も同じになってきていますよね。売り手も消費者も個性ある商品を求めているのに、小売側がこうしたニーズを捉えられず、“遊び”がなくなってきている。店舗ごとに独自の個性を打ち出していけば、もっと良くなるはずです。

 また、日本国内の価格競争について言及すると、いま中国・台湾の仕事をしていますが、向こうのユーザーから「良い物は高く売ってくれ、安い物は思い切り安く売ってくれ」と言われます。“良くて安い物はいらない”のです。今まで、日本人は安く良い物を作るのが得意でした。それを否定されたのです。こうした商品の二極化もどんどん進んでいきます。今のうちに“日本の食”もきちんとブランディングしておかないと、取り残されてしまう気がします。
 とくに北海道の場合、原材料の供給が多くて、自ら加工品を作っていかないと付加価値が生まれない。例えば、東京で1個100円の鯛焼が売れたとすると、原材料の小麦や小豆はほとんど北海道産ですが、北海道の生産者には7円しか入ってこないのが実情です。

 今の食品は流通上の様々なフィルターがかかった中で、金額が成り立っています。しかし、これからは生産者が直接、自分の商品を売っていく時代になります。先ほど述べたように、ひとつひとつのパイが小さくなったとしても、販路は増えていきますから。その時、自分の商品は誰に? 一体どんな人に買ってもらいたいのか? しっかり考えて販路を決めた人でないと物は売りにくくなっていくでしょう。
 価格競争で一番厳しいのは、おそらく市場価格が支配しているカテゴリーです。例えば肉であれば、自ら加工品を持てるかどうか重要です。自分で値段を決められる商品を持っているかどうかで、市場に左右されなくて済むわけですから。
 おそらく先ほどの商品の二極化や加工品を持てるかといった課題に対して、どちらかではなく、両方持っていないと安定はしないのだと思います。

【食品小売業の課題】
特徴を活かした店舗・売場づくりをしないと、小売店としての存在意義はない

 小売店の側も、百貨店は百貨店らしさ、量販店は量販の良さを活かした特徴を持たないと駄目です。でも、百貨店も量販店も一口に良さと言っても様々な切り口がある。自分たちは何に強いのか? 企業として消費者に何を期待されているのか? 理解しながら組み立てができるかどうかが重要です。
 今の時代、消費者も経済的に楽ではありません。買うことに慎重になっていますし、買うことに対する刺激がない限り商品を買っていただけない。では、それをどうやって変えるのか? そのためにも、特徴のある店舗や売場作りをしないと、小売店としての存在意義がありません。すべて60点の品揃えだったら、どのお店も同じです。何か突き抜けた特徴を持たせることが絶対に必要です。このお店に行けば絶対あるという商品、このお店に聞けば絶対わかるという情報、これが特徴です。
 その結果、同じ百貨店同士、同じ量販店同士、きちんと商品で棲み分けしていく時代が来ると思います。今後、スーパーは高級化路線を推し進めていくと思いますが、では百貨店らしさの根本は何か? それをもう1回見直す時期に来ていると思います。

 例えば、一昨年の7月末に東武百貨店の北海道物産展を行った時、1万2600円のステーキ弁当を作りました。東京都内には21のデパートがあり、どの店舗も北海道展をやっていますが、5億円の売上げがあげられる東武百貨店だからできる豪華弁当なのです。
 まず5億円の売上が上げられるということは、他より圧倒的に多くのお客さまが来るため、1万2600円のお弁当を買えるお客さまが来る確率も高くなります。なおかつ東武百貨店の北海道展というステータスの中で販売するため、1万2600円のお弁当が売れるわけです。これが百貨店らしい売り方です。
 どこの店舗もついて行けないことをやる、これがひとつの技です。

 毎回1万2600円のステーキ弁当を販売するのですが、いつも完売します。なぜ売れるのか種明かしをすると、もちろん仕掛けがあります。
 平成23年3月11日に東日本大震災がありましたが、東武百貨店では1カ月後に北海道物産展の催事を組んでいました。そこで、“去年よりは入店客数が減るけれど、お客さんが減っても数字を残すにはどうするか? そのためには単価を上げるしかない”と予想をします。そして、この単価を上げるために1万2600円の弁当を作りました。
 もうひとつの仕掛けは、今まで3000円のお弁当が最高額で価格帯の中心は1200円、会期中の売上は900万円でした。これを変えるために最高額1万2600円のお弁当を作ると、価格帯の中心が3000円に上がってくる。すると消費者は3000円のお弁当を安く感じます。心理的な面も計算して作るわけです。これにより平均単価は2000円近くまで上がり、会期中の売上は1700万という数字を記録しました。


1万2600円のステーキ弁当

 今度は1万2600円のお弁当を売るために、どうやって仕掛けるかというと、メディアと連動させます。当時、北海道のグルメツアー『たまらんキング』というテレビ番組に、タレントの方々と一緒に僕も出演させていただきました。番組では、北海道の様々なグルメを食べた後、最後に豊平館というレストランでステーキを食べるのですが、もちろん皆さんに大好評。そして私が「このステーキで1万2600円のお弁当を作ります」と言うと、「美味しいけれど、1万2600円は高い」というコメントが返ってくる。そこで私が「北海道に来ることを考えたら安いですよね」と切り返すのがオチなのです。このオチはこの弁当を作ろうという時にアイデアとして既に頭の中にありました。

でも、物産展の本質はここにあります。わざわざ行かなくても、わざわざ向こうから来てくれるという、“わざわざ”同士の集まりが物産展です。そうなると、12,600円のステーキ弁当も北海道に行くことを考えたら安く感じて、今しか食べられないと思ったら買ってもらうチャンスになるわけです。そういうストーリーの中で組み立てていくのが、物産展の本来あるべき売り方だと思います。

 いいものは高く売って、安い物はとことん安く。この二極化は今後どんどん開いていかもしれません。そうなると、普通の物はなくなっていくかもしれない。そのためにも小売側の人間は、お客様を常に見ていることが一番。売れる物を考える時には大切なことです。
 顧客側の心理というのは“目的”です。百貨店に来るお客さまは何か商品を絶対に買おうと思って来店されるわけです。意識としてはデイリーの物ではなく、クオリティの高い物を買おうしている。ですが、百貨店も売りやすい商品にどんどん移行してきている。だとしたら、百貨店は百貨店という役割、百貨店の目的意識の中で消費者側をどう捉えていくかがポイントになってくる。
 量販店も同様です。僕は家の隣がスーパーなのでよく見に行っているのですが、やはりスーパーに行くときの目的意識はデイリーですよね。でも、デイリーの中のでも飽きはある。いつも同じ物を置いておくのか? 百貨店も量販店も常にお客さまを“飽きさせない”商売をしなければいけない、だから“商い”なのです。

2017年07月27日(木)

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