大分県 平松守彦 前知事|永瀬正彦 対談|バイヤーズ・ガイド

連載記事

編集発行人 永瀬正彦 対談

大分県

平松守彦 前知事

グローバルに考え、ローカルに行動せよ“一村一品運動”

世界と同一になることではなく、地域文化の特性をいかに世界に提示できるか

 私が地域を思う時、頭に浮かぶ言葉は、アメリカの経済学者ジョン・ネイスビッツの “Think Global, Act Local(グローバルに考え、ローカルに行動せよ)”です。彼が言うグローバル化とは、“世界と同一になることではなく、地域文化の特性をいかに世界に提示できるかだ”と指摘しています。

 そして、この活動を日本で“一村一品運動”として実践してきたのが、前大分県知事の平松守彦先生です。昨年、ご挨拶と取材で2回ほどお目にかかりましたが、85歳とご高齢ながら元気にアジアやアフリカで積極的に講演や指導を行っておられます。

歴史・伝統を活かし、地域を挙げて持続的に発展させていく

 平松先生が大分県知事になった1979年、大分県は全国的な知名度があまりありませんでした。どうすれば大分という名前を日本中の方に知ってもらえるか? どうすれば大分にたくさんの人を呼べるのか? 平松先生は県内産業を育成し、観光開発などによって地域を活性化させるため、全国を駆け回って、大分の売り込みを懸命にしたそうです。

 その時、平松先生の頭に常にあったのは、一連の動きを“一過性のもの”に終わらせないということでした。どの地域にも、古くから人々が育んできた歴史があり、伝統がある。これをうまく活かし、“地域を挙げて持続的に発展させていく”ことが何よりも大切だと考えたのです。何かのきっかけでブームとして全国に知れ渡ることは、その時はいいかもしれない。しかし、一時の盛り上がりだけで終わるのでは、本当の地域の活性化にはつながりません。

地域の特徴を出した、世界に通用するモノ作り

 平松先生の一村一品運動は、県内各地域の特徴を“貴重な資源”としてとらえ、地域の歴史や文化、人々の暮らしにうまく根付く仕組みを整え、全国、そして世界に発信していく取り組みです。もちろん、そこに単なるブームを仕掛けるという考えはありませんし、その地域のお土産品をつくる運動でもない。地域の特徴を出した、世界に通用するモノをつくる運動です。

 “ローカルにしてグローバル”“自主自立と創意工夫”“地域における人材の育成”、この3つが一村一品運動の3原則。特に最後の“地域における人材の育成”は、にっぽんe物産市における“地域プロデューサー育成”につながってきます。地域の生産者と地域プロデューサーが一体となり、自らの頭で考え、“そこにしかないモノ作り”を精力的に行っていくことが重要なのです。

地域産品のブランディング

 一村一品運動が育んだ地域産品として、麦焼酎があげられます。昔は焼酎といえば“ガード下の屋台で飲むもの”というイメージでしたが、“焼酎にカボスを絞ると美味しい。翌日に残らない”ことから、平松先生自身が東京の有名料亭に持ち込んでPRに努めました。その結果、1975年当時、全国シェアがわずか1%(乙類課税数量)だったものが、2003年には30%を超えるシェアになりました。

 また、海流が速く、水温の変化も小さいため、身の締まった魚が水揚げされる関崎の鯵や鯖は、「関あじ」「関さば」と名づけられ、全国的に知られる高級ブランドになっています。1996年には水産品として全国初となる商標登録を行い、今では関あじ1尾3000円ほどと、一般の鯵の3倍の価格がつくようになりました。

 この他にも、カボスや乾しいたけ、ハウスミカンなど、一村一品運動から生まれた食材は数多くあります。さらに、平松先生自ら「大分フェア」を開催し、政官界・スコミ・文化人・芸能人など各界の著名人約1000人を招待して大分の味をアピールしてもいます。

 こうした一村一品運動は、海外にも広く知られるようになり、中国、タイ、フィリピンなどのアジア諸国、最近ではアフリカの開発途上国でも実践され、地域の活性化と産業の育成に高い評価を受けています。

地域産品を活かすための3つの知恵

 それぞれの地域に伝統的にある食材などの資源を、どう活かすか。そしてどう地域の活性化に結びつけ、広めていくか。平松先生が長年の活動で得た3つのアドバイスは以下のとおりです。

●それぞれの地域の文化や歴史を結集させる
どこでもできるものではなく、地場の風土や歴史の中で育まれてきたものを発展させることが大切です。
●付加価値を向上させる
どの地域にも固有の文化があり、そしてどの素材にも“物語”があるはずです。その地域ならではのものに、さらに磨きをかける。地域食材の発展は、すなわち“ローカルに磨きをかける”ことなのです。
●食の安心・安全を徹底させる
地域発の食材は、危機的に低い国内自給率を上げる一助になる、重要な役割をもっています。アメリカやフランスなど、先進国はいずれも農業国であるという一面があります。それぞれの地域でとれたものを、安心して食べる。これこそ、地域食材のもつ大きな役割のひとつだと思います。

最後に

 以前、バイヤーズ・ガイドの商談でフランス大使館に伺った時、見本誌を見た担当農務官から平松先生を紹介してほしいと頼まれました。平松先生の活動は、農業大国フランスにまで届いていました。

 大分のために尽くしたことは、県境を越え、国境を越え、大陸を超えて、世界へ。日本そしてアジア、世界の人々の心に深く届いています。

2019年06月25日(火)

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