島根県 溝口善兵衛 知事|永瀬正彦 対談|バイヤーズ・ガイド

連載記事

編集発行人 永瀬正彦 対談

島根県

溝口善兵衛 知事

環境と歴史がつくる“地域の特産品”

中国山地に降る雨や雪が“いのちの水”を産む


島根県知事 溝口善兵衛 氏

 先日、島根県の溝口善兵衛知事にお会いし、島根の野菜や魚介類、牛肉などの生鮮食品は、清浄な自然環境、豊かな水の恵みの中で大切に育まれていることを伺ってきました。

 県南の中国山地に降る雨や雪はしっかりと山に蓄えられ、豊かな水となって大小の河川を流れて、島根の農林水産業を支えています。山間部の気温は昼夜の寒暖の差が大きく、米の美味しさのもととなるデンプンがたっぷり蓄えられた結果、ブランド米「仁多米」をはじめとするおいしい「島根米」として収穫されます。

 また、これまで幾度も「清流日本一」に輝いた高津川や、広島県を源流とする島根の大河、江の川などでは、天然の鮎が獲れます。

 山中でのびのび育った「しまね和牛」の子牛たちは、繁殖や肥育の“もと牛”として全国の和牛産地に巣立ちますが、そのまま、島根で育つ牛も大勢います。隠岐の島の牛は、急斜面を登り降りして育つことから足腰が強く、肉質のしまった黒毛和牛「隠岐牛」となり、東京の市場でも高く評価されています。

 豊かな水は出雲平野へと広がり、「ぶどう(デラウェア等)」、「メロン」といった果物を育みます。日本海に面した出雲市多伎町では、甘味が強く美味しいことで有名な「蓬莱柿(ホウライシ)」という種のいちじくが栽培されていますが、これは、家の前にある水田を使って転作作物として栽培を始めたのが始まりだとか。また、出雲市平田町では地元のお母さんたちが作る「母ちゃんブロッコリー」も親しまれています。“母ちゃん”が中心となって田畑の世話をし、仕事から帰ってきた“父ちゃん”がその手伝いをするといった、のんびりしたスタイルも島根流だそうです。

中海・宍道湖・日本海で漁獲される、豊富な魚介類

 山々からの水は最後には宍道湖に流れ込みます。宍道湖は、真水と海水が混じり合う汽水湖で、淡水性と海水性の生物の両方が生息しています。特に、「すずき」、「もろげえび」、「うなぎ」、「あまさぎ」、「しじみ」、「こい」、「しらうお」は“宍道湖七珍”と言って、昔から親しまれてきました(頭の文字をとって「すもうあしこし」と覚えてください)。NHK朝の連続テレビ小説『だんだん』で吉田栄作さんが演じた、主人公の父親はしじみ漁師でしたが、日本一の生産量を誇る大和しじみは特に有名で、味が良く出汁がよく出るそうです。


高級魚として知られる「のどくろ(あかむつ)」

 一方、外海では日本海の海流にのってあじ、さば、いわしなどが漁獲されます。特に浜田では、「のどぐろ(あかむつ)」が有名です。旬ののどぐろの脂ののった刺身や煮付けは絶品で、地元でも大人気です。他にも「十六島(うっぷるい)海苔(岩海苔)」や「めのは(わかめ)」といった海草類、隠岐の「岩がき」が楽しめます。こうした豊かな海産物を使った加工も盛んです。なかでも、県魚でもある「あご(トビウオ)」は、刺身はもちろん、丸太のように太い「あご野焼き」は迫力ある美味しさです。

島根の歴史とともに歩んだ、日本酒や茶文化・和菓子

 島根には歴史と食にまつわる物語も豊富です。

 有名なところでは、「ヤマタノオロチ伝説」があります。スサノオノミコト(素戔嗚命)が、クシナダヒメ(奇稲田姫命)との結婚を条件に、出雲国の肥河(斐伊川)で若い娘を連れ去るなど村人を困らせていたヤマタノオロチ(八岐大蛇)の退治を請け負います。スサノオノミコトは、首が8つもあるヤマタノオロチのために大きな酒樽を8つ用意し、酒に酔わせて眠ったところを首をはねて退治します。この神話にも登場するように、島根では古代の昔から、美味しいお米ときれいな水(斐伊川の伏流水)に恵まれ、酒が造られてきました。今でも、島根は出雲杜氏や石見杜氏と称される杜氏のいる日本有数の酒どころで、美味しい日本酒がたくさんあります。

 また、江戸時代になると、松江藩の第七代藩主で不昧公(ふまいこう)という傑出した文化人が登場しました。不昧公は、当時の代表的な茶人の一人で、松江にお茶の文化をもたらしました。今でも、秋には、松江城で十流派が一堂に集まる大茶会が開かれ、多くの市民や観光客が野点を楽しみます。こうしたお茶文化は、和菓子も発展させました。一般の家庭でも、ごく普通に、お茶と和菓子でお客様をおもてなしする風習が残っているそうです。

環境や食の安全確保・市場での競争力強化、産地のレベル向上を目指す


「島根県認証」マーク

 島根県では、農薬や化学肥料を減らす栽培など環境に優しい農業を応援する「環境を守る農業宣言」を呼びかけたところ、多くの生産者や消費者が参加し、県民運動となって拡がっているそうです。また、農薬や化学肥料を慣行の3割以上削減している農家を「エコファーマー」として認定し、エコファーマーがさらに農薬や化学肥料を5割以上削減して栽培した農産物については、「島根県エコロジー農産物」として推奨する制度も実施しています。

 また、食の安全確保や産地のレベル向上などを目的に、今年度から『美味(おい)しまね認証制度』をスタートさせました。この制度では、生産物の安全性を確保するため、最大62項目にもわたる詳細な管理基準が設定されています。また、高品質を守るため“安全強化基準”や“嗜好性基準”、地域の独自性を活かした“地域特性基準”も設けているそうです。そうして、有識者や消費者で構成する委員会が厳正な審査を行い、基準をすべて満たした商品のみが『島根県認証』マークを貼ることができます。認証された後も、監査や更新制度があって厳しく管理しているそうです。

 実はこの認証マーク、“縁結び”と“水引”をイメージした、とてもユニークなデザインで、店頭でよく見かけられるようになってきました。出雲大社は縁結びの神様です。溝口知事は商品を通じて、生産者と消費者の縁がつながることを大いに期待しているそうです。


溝口善兵衛知事とバイヤーズ・ガイド発行人・永瀬正彦

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を

 スサノオノミコトがクシナダヒメと結婚した時、結婚を祝い詠んだ日本で最初の和歌と言われているのが、この歌です。私たちも、生産者と消費者の素敵な縁をたくさん結びつけるお手伝いをしたいものです。

2019年04月22日(月)

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