Vol.2 王 理恵 さん|SPECIAL TALK|バイヤーズ・ガイド

連載記事

SPECIAL TALK

雑穀料理研究家
ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター

王 理恵 さん

日本の国で日本人のために作っているものが
一番安全・安心でおいしい

できるだけ体にいいものを食べよう。楽しく食べよう

 “食料自給率を上げよう”という 『FOOD ACTION NIPPON』の取り組みは、“ひとり一人が自分の食や健康に関してしっかり向き合うようになる社会を作っていこう”という運動でもあると私は思っています。

 そもそも、私が食に関して興味を持ち仕事にしようと思ったきっかけは、母が胃癌になった時、まったくものが食べられなくなり、弱っていく姿を見たことがきっかけです。

 その後、父も同じ病気になり、食べられないことで、体力的にも精神的にも弱っていく姿を見ました。私にとって、プロ野球の現役選手だったということもありますが、子供の頃から強い父以外見たことがなかったので、その父が「痛い、痛い」と言ったり、食事をとれなくてイライラしている姿を見ていたら、“食が関係しない人はいない。食がどれだけ大事なものか”について、一番実感した時でした。

今、父は元気になって食べることに対する執着がものすごい(笑)。一度、自分が食べられなくなったという経験から、危機感というか…。病気になったら明日から食べられないということを知ったので、できるだけ体にいいものを食べよう、楽しく食べよう、一食一食に対する思い入れが全然違うようになりました。

 人間は何かのきっかけがあって意識が変わります。誰もが病気になる前に、食に対する意識を変えることができればと常に願っています。

 現在、日本の食料自給率は41%ですが、実感が湧かない人がほとんどでしょう。これは、自分たちの食べものがどこからきているのか分からずに食べているからだと思います。

 例えば、私たちが和食をいただいたら、和食だから食材は日本のものだという意識がどこかにあります。また、スーパーに行って野菜を買うと、千葉県産や茨城県産と書いて売っているので、野菜は全部国内産だと思い込んでいます。でも、加工食品や外食でいただく食事は輸入食材が多い。天ぷら蕎麦であれば、蕎麦粉が輸入されていたり、天ぷらのエビ・小麦粉も輸入物で、ほとんどが外国産ということもありえます。だからこそ、“これはどこからきたのか?”という意識を持つことが大切なのだと思います。

食べものを賄えないだけでなく、健康や環境に対する影響も

 自給率41%という数字は、何かあった時に自分たちの食べるものを自分たちの国で賄えないということ。いずれは食べものを巡って国と国との争いが起こるかもしれません。そうなる前に、みんなが現状を認識し、できることに対して力を合わせることが大切です。

 ここまで自給率が落ちてしまった原因を探ると、私たちの先祖が食べていたようなご飯中心の食生活が変わり、ご飯以外の主食の選択肢が増えたからと言えるのではないでしょうか。そして、ご飯をあまり食べなくなった代わりに、脂肪分の多いお肉や加工品を食べる機会がとても増えました。

 これにより健康上の問題が出てきました。人間の遺伝子は変わらないのに、ここ何十年かの間に食べものだけが変わってしまい、体がまだついていけていない。だから、生活習慣病が増えてきています。

 また、環境に関する問題もあります。外国から食べものを輸入するということは、飛行機や船などで輸送するエネルギーがかかる。私たちが食べるという基本的なことをするために、環境にまず負荷をかけなければならない。今の日本はCO2を減らしていこう、世界にもアピールしていこうという国でありながら、根本的なところで相反することをしている。

 このように食料自給率の問題は、自分たちの食べものを賄えないというだけでなく、健康や環境など様々な問題と関連しているのです。

2022年10月06日(木)

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