Vol.3 小泉 武夫 氏|SPECIAL TALK|バイヤーズ・ガイド

連載記事

SPECIAL TALK

『フード・アクション・ニッポン アワード2012』実行委員長(東京農業大学 名誉教授)

小泉 武夫

食料自給率向上に向けた、流通小売業への期待

 我が国の食料自給率は、食生活の変化や食料供給力の脆弱化などに伴い、近年ではカロリーベースで40%前後となっており、他の先進国と比較しても低い水準で推移しています。このような中、国や消費者、企業等が一体となって国産農産物の消費拡大を推進し、食料自給率向上を図る取組として2008年10月にスタートしたのが、『フード・アクション・ニッポン(以下、FAN)』。
 そして食料自給率向上に寄与する取組を一般から募集し、広く社会に浸透させ、私たちや未来の子供たちが安心しておいしく食べていける社会の実現をめざすのが、2009年度に創設された『フード・アクション・ニッポン アワード(以下、FANアワード)』です。このFANアワードの小泉武夫 実行委員長(東京農業大学 名誉教授)に、食料自給率についてお話いただきました。

私たちの命を外国が握っている、非常に危険な状態

 日本はサッカーに例えるなら、食料自給率が40%(カロリーベース)を切り、もはやレッドカードに近い状況になっています。


『フード・アクション・ニッポン アワード2012』実行委員長 小泉武夫 氏

 農業生産の現場では、日本の就農者の平均年齢は66歳、耕作放棄地も約39万haで埼玉県や滋賀県とほぼ同じ面積という深刻な問題を招いています。

 また、21世紀は“食べ物が国力”という時代です。外国産の食料に6割以上も頼っているということは、私たちの命を外国人が握っているということと同じですね。これからの日本で生きていく子供たちのことを考えると、非常に危険な状態にあるのです。

 こうした深刻な問題・危険な状態を解決すべく、国民みんなが立ち上がって、食料生産を始めなければ手遅れになります。『フード・アクション・ニッポン』という活動を通して、みんなで意識改革をしていきましょう。

和食中心の食生活に戻すことで、健康を取り戻そう

 食料自給率向上に向けた解決策はいくつもあります。まず最初に、農の現場を活性化しましょう。たとえば都市部の若者が農家に行くのを支援したら、地方から元気が出て、農業生産というものは本当に強くなります。

 また、食生活を和食に戻すことも大事です。私たちの食生活を振り返ると、この50年間で油の消費量は3倍、肉の量は5倍を超しました。かつて低脂肪・低カロリー食だった日本人の食生活が高脂肪・高カロリーに転じたことが、生活習慣病になる原因のひとつとも言われています。和食中心の食生活をしていた昔の日本人に、生活習慣病は少なかったと思います。自分たちで作った野菜を自分たちで食べることが大切なのです。

農家と消費者の間に立つ、バイヤーが担うべき役割

 このように、今や食料自給率が一時も目を離せない危篤状態であると言うことを認識して、国民が一体となることが大切です。

 流通小売業の皆様には、農家を助けてほしい。例えば、地方のある大手スーパーでは、70件くらいの農家が店内に売場を持っています。売っている野菜は朝採りなので新鮮で美味しく、安心でそのうえ安い。すると、地元の消費者だけでなくプロの料理人も買いに集まり、結果的に地元の野菜や果物が消費されていく。こうした事例のように、流通に手助けしてほしいのです。

 最後になりましたが、バイヤーの皆様には、農家の人たちに「こういうものを作って欲しい」「この野菜は良いね」というように、お互い対話することから始めてほしい。バイヤーの方が“作る人”と“使う人”の真ん中に立った使者という役割を担ってくれれば、日本の食料自給率はきっと向上するはずです。

プロフィール
『フード・アクション・ニッポン アワード2012』実行委員長(東京農業大学 名誉教授)
小泉 武夫 氏
食の冒険家、農学博士。1934年、福島県の造り酒屋に生まれる。醸造学、発酵学の第一人者として教壇に立つかたわら、学術調査を兼ねて世界の辺境の地を精力的に訪ねる。また作家、エッセイストとして執筆活動にも力を注ぎ、新聞、雑誌の連載コラムを持つ。
2022年10月05日(水)

暦と旬で見る食カレンダー

180日後

2023年4月3日(月)

ページトップ