Vol.4 内田 勝規 氏|SPECIAL TALK|バイヤーズ・ガイド

連載記事

SPECIAL TALK

株式会社オフィス内田 代表取締役会長

内田 勝規

カリスマバイヤーが教える「売れる仕掛け」

【売場のつくり方】
非日常的のワクワク感、“限りある”希少性が、消費者の購買心理を刺激する

 売場には本来、市場のようなワクワク感がないといけない。このワクワク感は、人の動きによって起こります。人が介在しているワクワク感です。
 僕が北海道物産展をお手伝いした時、1万2600円のお弁当が売れる根拠は非日常的な空間を作ること。なぜ、お客さまが北海道物産展に来ていただけるのかというと、北海道に行きたいけれど行けないからです。北海道に毎日美味しい物を買いに行けたら、こんな便利なことはないけれど現実には行けない。となると、北海道物産展は北海道に行くときのワクワク感を疑似体験できる場所でないとならない。そのために全部の五感、ありとあらゆるものを使うわけです。
 すると、1日に200杯しか売れないラーメン屋さんが物産展の会場では、1日に1300杯売れたりする。このように非日常的な売上を作るためには、非日常的な演出がないと売れないわけです。消費者側に非日常的な興奮、感動を与えられないと駄目なわけです。

 そして、“限りがある”“期限がある”ことに対する購買意欲も重要です。“いつもある”という安心感とは別に、朝市が朝しか営業していないように、“今しか変えない”という部分が市場の特性です。限られた時間という希少性が消費者の購買心理を刺激しているわけですね。
 地域の特産品が陳腐化している一番悪い事例は、同じ商品がどこでも買えるという状態です。例えば、僕が沖縄の百貨店で日本中の名産品を集めた催事を行っているので見学したところ、ある地域の有名菓子が爆発的に売れていました。都内某所で同じような催事で見たときには誰も買っていない商品です。その理由を探ってみると、東京都内で探したらどこかで売っている商品でも、沖縄から見たらその地域に行かなければ絶対に買えない。商品の陳腐化は、まさにこうした現象です。そこでしか買えないという熱狂的な売り方が連続すれば、どこでも買えるという心理になり、その熱は冷めていく。この売り方を間違えてしまうと、商品はどんどん陳腐化していくでしょう。

 このように時間の基軸や場所によって、流行りは変わっていきます。こうした商品の流行・寿命は絶対に生産者側は覚えておいたほうがいい。特にスイーツは3年程度と寿命が短い。だからといって、その3年で終わりということではない。すべてが東京で起承転結するのではなく、海外まで含めると流行の波は続いていきます。例えば生キャラメルも国内ではピークを過ぎましたが、いま台湾で爆発的に売れています。

 さらに、これからは旬で売っていくことも重要です。例えば「トマトの旬っていつ?」と聞かれたら、皆さんはビニールハウスで作っているから通年だと思うかもしれませんが、実は露地物でちゃんと栽培されています。喜界島では、2月〜3月の露地物のトマトが一番美味しい。でも今の売り方だと、一般的なトマトの棚は1年中トマトを置くための場所だから、ハウスのトマトを置くことになる。でも、これからの売り方は2月で一番美味しいのは喜界島のトマトだから、喜界島のトマトを置くという売り方にならなければいけない。これが付加価値のつけ方です。
 また、胡麻は99.9%がが中国から輸入されていますが、残りの0.1%は喜界島で作られています。喜界島の胡麻は通常の胡麻と比べると、粒の大きさは半分以下ですが、香りは数十倍あります。この喜界島の胡麻はどこで使われているかというと、ほとんど料亭でしか流通していません。でも消費者がこうしたストーリーを耳にしたら、きっと欲しがるはずです。これからは、そういう売り方をすべきですね。

 これだけ外的要因や競争相手が増えているのですから、一生懸命やっている努力や手間を付加価値としてきちんと表現すべきです。売るという行為を仕事の中に入れるべきなのです。

【これからのバイヤー像】
誰かの後をなぞるのではなく、自ら汗をかいてモノを探せ!

 バイヤーという仕事は、とにかく仕事自体が好きで、自ら楽しむことができないと厳しいでしょう。僕は3カ月間で8万マイル乗っていますが、飛行機に乗るのがとても楽しい。例えば羽田空港に行っただけでも、様々な場所に行くお客さまを見るのが楽しい。例えば何年か前の鹿児島便であれば、篤姫目当ての観光客が沢山いたけれど今はいないとか、札幌から帰ってくる観光客はあのメーカーの手提げ袋を持っている人が多いな、など良い調査になるわけです。

 また、自分がこんな珍しい物を探してきたことを、やはりお客さまに評価して欲しい。「このラーメン屋さんをくどき落としてきたぞ」と表現したいわけです。実際、日本中のラーメンを食べているような人が北海道物産展の初日に現れて、「今回のラーメンは今ひとつですね」などと評価されると、次は絶対にぎゃふんと言わせようと思ったりします。
 とにかくチャレンジしてみる、やってみる。これがバイヤーの楽しさです。

 あとは全く自分が知らなかった商品と出会えたりする。例えば、チーズは日本人の主食ではありませんが、日本人のチーズの消費量は10年間で10倍になっている。でも、北海道のチーズの生産量は倍にしかなっていない。ほとんどは海外から入ってきているのです。そこで日本のチーズをどうにかしないといけないという思いで探していたところ、チーズの周りにドライフルーツが固めてある商品と出会いました。今までいろんなケーキを食べてきましたけれど、こんなに濃厚でこんなに美味しいケーキはないだろうと思った。もう絶対に売れる商品です。そういう商品を見つけてきた時は、とてもうれしい。
 また、“釈迦頭(アテモヤ)”というお釈迦様の後ろ姿のような果物があって、食べるとバニラアイスのような味がする。現地に行くと200〜300円で売っているのですが、都内の高級青果店では1個7000〜8000円で売っています。生産者の人が1000円で売ることができたら、生産者にもって還元することができるなどというように、気づくのが楽しい。

 日本には、隠れた逸品や美味しい物はまだまだ沢山あります。
 最近は、“和”のテイストが流行っていますが、今まで小豆は和菓子でしか使っていなかった。けれども、小豆を使った洋菓子があってもいい。
 このようにトレンドは、お客様の買っている物、売上、様々な方に話を聞いて自分で作ることです。“売りたいもの”と“売れるもの”は、違います。買ってくれるのはお客様ですから。
 さらに、地域同士でコラボレーションした物作りも流行ってきています。例えば静岡県のお茶と、北海道の乳製品がコラボしたチーズケーキが出てきたり。このように東京が中心点ではない、地域を越えた物作りがこれからもっと増えていくと思います。

 消費者ニーズも地域によって異なるので面白い。例えば、北海道十勝にある上士幌町のAコープさんが、和歌山県の小さい村から物産展をやって欲しいと頼まれて、人口500人の村でやってみたところ1日で400万円売れました。ただし、上士幌町は十勝のど真ん中にあるので、本当は『十勝ナイタイ和牛』という高級ブランド牛肉を売りたかったのですが、実際は蟹が一番売れました。和歌山県は近くに、神戸牛・松阪牛・近江牛など牛肉文化の地域が一杯あったためです。北海道では十勝ナイタイ和牛はサシが自慢だったのですが、現地ではサシの入れ方が甘いと表現されたそうですよ。やはり牛肉の本場に行くと、競争が厳しくなるわけです。

 やはりバイヤーという仕事は、汗かいてモノ探しをした方がいい。誰かの後をなぞっていたら、自分で一番楽しいところを放棄しているだけ。そんな時間はないと言う人がいますが、時間は自分で作るものです。
 また私の東武百貨店時代、出張経費は会社が出してくれましたが、私が尊敬する同業他店の方は自腹で出張にきていましたね。その方と北海道の様々な地域でばったり会って話すと、やっぱり探すのが楽しいと言いました。本物のバイヤーです。

2022年08月13日(土)

暦と旬で見る食カレンダー

180日後

2023年2月9日(木)

ページトップ